大和昌平[著] 牧師の読み解く般若心経のレビュー

大和昌平[著] 牧師の読み解く般若心経
大和昌平[著] 牧師の読み解く般若心経

仏教学者による般若心経解説本は何冊か読んだことがあるが、本書は牧師がキリスト教の教えと絡めながら解説する画期的な本。

聖書の「伝道者の書」にも「空」という言葉が出てくるのはよく知られている。クリスチャンなら、これは神なしで生きる空しさを説くもので、仏教の「空」とは全く違うものであることは知っているかと思うが、私は著者が指摘/提案する次のような点に賛同している:

1.「空」の概念を、日本人は、日本人が昔から特に好きな「浮き世の悲哀」「無常”感”」(本来は無常”観”)といった情緒的なものに変えてしまい、そちらのイメージのほうが定着してしまった。

2. いっぽう西洋では「空」がemptinessと英訳されたせいで、虚無的な、ニヒリズム的な感じに誤解されていった。

3. ガラテア人への手紙2章20節にあるパウロの想いこそ、『キリストにある「空」の境地』である。

4. キリスト教は「愛」という言葉をよく使うが、仏教徒には「愛」よりも「慈しみ」のほうが本来の意味が伝わりやすいのではないか。

4.に挙げた点は特に賛成する。仏教徒のみならず、一般的な日本人には「神はあなたを愛している」とか「キリストの愛」などはムズムズするような、胡散臭いような感じに聞こえる人もいるのではないかと私は思う(日本人なら、例えば映画などでI love you と言い過ぎるアメリカ人には違和感を覚えるはずだ)。それが日本でクリスチャンが一向に増えない要因の一つになってさえいるのではないかとも思う。

仏教解説部分が長く感じた箇所が所々あったので★を4つにしたが、キリスト教を新たな視点から見てみたい人に是非おすすめしたい。

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J.T.さん